シン・ゴジラはシミュレーション映画だった
シン・ゴジラを見に行った。
立川の極上爆音上映だ。爆弾投下も、ゴジラがビルを壊す時も、とにかく体にずしんずしんと響いてくる。
批評も賛同もいろいろある本作だが、普通に面白かった。起承転結でもシド・フィールドの提唱する三幕構成になぞらえてもいいが、とにかくストーリーの構成は完璧に近く、盛り上がるべきところで否応なく盛り上がる。台詞運びも緻密に作られていた。
確かに日本を襲う"モノ"がゴジラでなくてはいけない理由は薄いし、総理の決断の速さは異様だ。が、そこはフィクションなのだから、そこにどうのこうのいうのは野暮。
パンデミック小説、というジャンルがあるかどうかはともかく、私はこのジャンルをそう呼んでいる。ある病原体がある街で発生した。という小説家が提案するシミュレーションである。
最近読んだ中で面白かったのは「夏の災厄」であり、日本脳炎とおぼしき感染症が埼玉県の田舎を席巻する様子が描かれる。たいていこういったフィクションの主人公は事件から近しい立場にいることが多いが、主人公は保健所の人間であり、お役所的なたらいまわしにより、感染症の対策は遅れたりなかったことにされようとしたりする。かなり分厚く、冒頭は退屈なため、最初は失敗したかな、と思っていたのだが、ページ数が1/5を超える頃には夢中になって貪り読んだ。
最近、仕事でパンデミック小説を頻繁に読みふけっているのだが、その頭で見ると、シン・ゴジラは、「シミュレーション映画」なのだ。
善意の政治家がいて、そこに襲いかかってくるゴジラという災厄がいる。日本は、首都東京はどうなるのか。庵野監督のシミュレーション映像なのである。
ゆえに、実在の武器や戦闘機が使われ、テロップも入る。人間へのフォーカスが小さいのは当たり前で、これはゴジラifなのだ。人間は理想化されすぎているかもしれない。しかしここまでノンフィクションにしたら、多分東京は壊滅しているエンドしかない。そこまで日本がダメで何も教訓にしなかった国だと思うのは悲しい。庵野監督の愛があり、理想があふれていた。
ちなみに、実際、他にも、夏の災厄が似ていると思われている方もいた。
パンデミック小説というと、ゾンビやホラー映画とも近似したジャンルとなり、ただ派手な演出や人間模様が繰り広げられる事も多いのだが、シミュレーションifはゲームでも小説でも面白いので今後こういったものも増えるのは大歓迎だ。
個人的には初期ゴジラの話も少し出たのが、嬉しかった。他人と喋っている時に思わず知人が知り合い同士だった、というような感覚だ。
シン・ゴジラを見る前に、一応、と思ってhuluで「ゴジラ」を見た。
私がリアルタイムで見たのは「ゴジラvsスペースゴジラ」だっただろうか。実はよく覚えていない。ただ、隣で座っていた祖父が「福岡タワーですばい」と興奮していた。自分の街が破壊されているのをよくもそんなに喜んでいられるな、と小学生の私は冷ややかに思った。映画の内容は覚えていないくせに、その気持ちは鮮やかに覚えているのだ。
Huluで初めて観たゴジラは、白黒で、正直街を破壊して回っているだけ。観ていると眠気が襲ってきた。野山に登ってみんなが「ゴジラだゴジラだ」と騒いでいるところなんか、昔ののんきさに見えた。
でも、これがシリーズを重ねてシミュレーション映画になった。これからもゴジラは、その名前だけで姿を変え続ける映画になるのかもしれない。
でも、それで新しいファンが増え、ゴジラを新たに知る人だって出るはずだ。
とにもかくにも、シン・ゴジラはおすすめです。
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↑初代ゴジラやシリーズタイトルはHuluで見放題です。(2016/08/18現在)