muppi’s diary

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福岡の会社が東京へ進出した話

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提供:福岡市

所属する会社が、昨年の冬、東京に移転した。年が明けて、3回目の帰省になるだろうか。帰省といっても、仕事がてら。実家は佐賀で、やや不便なアクセスにあるから、そこには帰らずホテルに宿泊してそのまま福岡空港へ舞い戻る事も多い。

もともと取引先の90%以上は東京。ざっくりくくるとITとかゲーム関係と自称できるとはいえ、同じ職種だと胸を張って言えるような仲間に福岡で出会ったことはない。

そんな状況だから、いつか東京へ、というのは自明だった。今回の帰省で、似たような悩みを持つメディアディレクターのMさんに出会い、東京へ移転することについて情報交換した。少人数だからこそ、会社ごと、仲間ごと移転することができたのだが、地方で同様の悩みを抱えている方は参考にしてほしいと思う。

仕事だけで考えたら東京に行くしかない

今まで、東京へ行くことを頑なに拒んでいた。

それは東京が嫌いだからとか、そういう安直な理由ではなく、単に自分が東京という大きなコンテンツに縛られたくなかったからだ。

できるだけ自由でいたかった。

PCとWIFIさえあればどこでも仕事ができることを証明してみせる。

そう思っていた時期もあった。

しかし、それはいっときのことだった。

多分、自分がフリーランスで、なんとなく人道的な生活レベルを保っていられたらいいな、と思えるような性格だったら、それはうまくいったと思う。

実際には自分はプロデューサー職もやっていたし、ディレクターを兼任しなければいけないこともままあった。それらは当初の目論見ではオンラインで完結するはずだったが、人はチャットツールやメールではなかなか自分の思い通りに動かないのを痛感しなければならなかった。

そう、人。売上を上げるにも、何かを成し遂げるにも人が重要だった。

そう考えると、東京はなんと魅力的な土地だろうか。

東京は、やっぱり人は仕事で生きている、燃焼してるぞ、という感じがする。ちょっとした飲みの席で仕事が決まったりすることなんかを伝え聞く。疎外感があった。ちょっとしたセミナーやイベントも、おいそれとは参加できない歯がゆさもあった。あの輪の中に入りたいと思った。何より福岡にはライバルがいなかった。あの人のようになりたいとか、ああいうものをつくってみたいとか思う相手は、福岡にはおらず、後輩たちは、就業して1年もたてば、まるで10年選手のようないっぱしの口を聞くようになる。周囲に比べる相手も、付き合いのある相手もいないのだ。まさに井の中の蛙だった。このままいけば、何かが後退していくのではないか。そんな焦りが生まれたところで、とうとう東京へ行く、と決心した。

迷いがなかったわけじゃない。私は一度東京に暮らし、東京に挫折していた。

福岡は、ライフスタイルが全てであると言っても過言では無い。平尾に行けば、新婚夫婦でもわりといいマンションに住める。車も持っている家庭が多いだろう。子どもの教育にも悪くないように見える。

アクセスが良い。都会機能は天神にギュッと凝縮しており、だいたいの用途はここで事足りる。通勤ラッシュは存在するが、山の手線のように混むことはない。それほど文句を言わなければ、天神から歩いて10分くらいのひとり暮らしのマンションが6、7万で借りられる。

ご飯はビックリするくらいおいしい。福岡にミシュランは必要ないし、存在を知らない人もいるだろう。チェーン店に入るのは金が無い大学生くらいのもので、そのへんの店にひょいと入っても、店主のこだわった食材が出て来る。

帰省の際、友人と中州のであい橋近くにある「デフィ・ジョルジュマルソー」でフレンチを食べたが、5,000円でお腹いっぱいフルコースを食べた。品のいい窓枠にはライトアップされた木の葉の影が落ちていて、グルメの友人らしい希望でこの店に来たのだが、これは明らかにデートで使われる場所であった。

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これは、フォアグラの乗った佐賀牛のハンバーグ(その下がナス)。ハンバーグを好んで食べようと思う事はないが、これは柔らかくて本当においしかった。創作料理がメインのお店らしく、このお皿の左下にあるのは生の胡椒。初めて食べたが、ややゆず胡椒に似た風味。

であい橋を渡って、キャナルシティのほうへ。川の眺めはどこか道頓堀と似ている。3時までやっているカフェバーに入って、長く話した。終電という概念はありはするが、ひとり暮らしをしている皆はなんとなく、タクシー圏内に住んでいることが多い。東京に来ると、10時とかそれくらいに慌ただしく帰らなければいけない。

こういう人生の豊かさっていうのを東京では感じない。行くところに行けば満喫している人はいるんだろうが、仲間みんなでそうできるかというと、現実的ではないと感じた。

仕事と娯楽は東京しかない。それは誰もが分かっている

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東京に来てから、人に恵まれた。

仲間で引っ越したから寂しさを感じることもない。

仕事の引き合いも増えたし、福岡でできなかった協業もできた。

基本、仕事人間なので、全く仕事の接点がないと話題に事欠くが、そうではない相手が近くに住んでいて、打ち合わせできたりするっていうのは素直に喜びだった。

仕事面は充実したが、生活レベルは想定以上に下がった。

チェーン店じたいを知らないというのもあるが、入る店入る店、チェーン店なのである。トイレに入って、「トイレの中まで大変失礼いたします。……」という貼り紙を見る度にここもかとがっくりくる。

一緒に福岡から来た女の子は、昼ご飯にコンビニに行って、夜ご飯は青汁飲んで寝てると言う。そういえばコンビニのおにぎりやお弁当も福岡では滅多に利用しなかったが、確かにへたな居酒屋より余程おいしいなと東京へ来て思った。

今住んでいるのは東京でも西にある、やや田舎と位置づけられる場所である。これが渋谷や新宿近辺を選んでいればどうなったんだろうと思うことはある。もっと人と会って、娯楽も多くなっただろう。仕事も多くなったのだろうか。そしてより疲弊するんだろうか、と。

今はいい。挑戦したいという思いがある。しかし、自分にしても、仲間にしてもこの先ずっと東京で働き続けるのは難しいだろう。

そのための受け皿を福岡に持ち続けるべきなのではないだろうか。

移転に関する大半の悩みは採用であることが多い

 

話はさかのぼるが、大半の企業が東京進出を検討するのは、採用であることが多いように思う。

まず、中途採用をしたい場合、ほとんど採用できる人がいない。

厳密に言うと、採用できるレベルの人がいない、という意味だ。

東京から人が出て来ないのだ。

福岡では、現在福岡市以外に住んでいる人で、採用された人に引っ越し費のような形で40万与える方策を2015年立てており、私たちにもオファーが数件あったが、厳しい言い方をすれば、そのリストには、東京の熾烈な競争に競り負けたというようなレベルの人しかいなかった。東京でそこそこのキャリアを積めば、福岡で仕事をするというのは都落ちに他ならないのだろう。

東京に拠点があれば、そこを入り口にすることはできる。実際、ある福岡の企業は私が知っている限り、ほとんど東京支社からの異動だ。ただし、彼らは皆九州人なので、在職しながらのUターンともいえるかもしれない。

これからは単に移転、引っ越しだけではなく、ライフレベルを向上させる受け皿としての地方都市が視野にあってもいいのではないか。

仕事や人を東京で取り、中堅やややルーチン的な開発を福岡で持つというのは理想だ。

福岡人は、仕事はそこそこだ。趣味や生活レベルを向上させよう! みたいな気概はあってもガツガツ仕事はしない。というか、ガツガツ仕事をするのは、何となくカッコ悪いよね、クールじゃないよね、そんな空気さえある。

それが物足りなくあったが、それで皆が東京でするように仕事に精を出し始めて、チェーン店が立ち並ぶ福岡になってしまったら、味気ない。東京に来てから、福岡の良さを思ったけれど、結局、ないものねだりをしているのだろう。両立しえない領域なのだ。

で、福岡では、今までなかった我々の業界が若干盛り上がりの兆しを見せている。なぜこの時期にと思ったりもするけれど、また近いうちに仕事の打ち合わせでも来て、この動きが本流になるのか確かめたい。